注文住宅にインナーガレージを設けるメリット・デメリットとは?
住居と駐車スペースが一体化していて、洗練された印象を与えるインナーガレージですが、実際は、生活にどのような影響をもたらすのでしょうか。本記事では、注文住宅にインナーガレージを設けるメリット・デメリットや注意点を紹介します。これからインナーガレージの組み込みを検討している方はぜひ参考にしてください。
そもそも「インナーガレージ」とは?
一般的にガレージといえば、住宅と別に独立した車庫のイメージがありますが、それに対し、インナーガレージは、建物の一部に駐車できるスペースを組み込んだ形のガレージのことです。出入口にシャッターやドアを設置し、居室の一部のように使用されるのを見かけることがあります。
注文住宅にインナーガレージを設けるメリット
インナーガレージは、車好きの方がこだわりを持って組み込むもの、と考えている方もいるでしょう。しかし、インナーガレージには趣味として車を楽しめる以外にも、もう少し広いメリットがあります。ここでは、インナーガレージを設けるメリットを4つ紹介します。
限られた敷地で駐車スペースを確保できる
なかなか広いスペースが確保しにくい都市部でも、家を建てる計画をしたときにインナーガレージを組み込んでおけば、自宅から離れた契約駐車場まで移動する手間もなく、高い駐車場代を払い続ける必要もありません。
外的環境から車を保護できる
インナーガレージを持つことで、雨、雪、紫外線から車を保護できることに加え、地域によっては大きな問題となる塩害・黄砂などのダメージを減らすこともできます。長期的には、車のメンテナンスの回数を抑えられることにつながります。また、ほかの部屋と隣接しているため、車上荒らしや車へいたずらされる可能性が少なく、万が一狙われたときも犯行に気づきやすいメリットもあります。
多機能なプライベート空間として活用できる
車だけでなく自転車やバイク、部屋を圧迫しがちな大きめの備品もガレージ内で保管できます。居室空間に余裕ができ、美しい状態を保ちやすくなるでしょう。また、陽射しの強い日や悪天候でも関係なく、屋外に比べ人目を気にすることもなく、安全に趣味や遊びを楽しめます。
住宅の延床面積を増やせる特例が適用される
インナーガレージを組み込んだことで、ほかの居住面積が減った分、住宅の延床面積を増やせる特例が適用されます。延床面積は、各階の床面積を合計した面積のことで、たとえば1階が150平方メートル、2階が100平方メートルの場合、延床面積は250平方メートルとなります。
せっかく家を建てるなら大きな家にしたいと思うかもしれませんが、延床面積は建築基準法で上限が定められています。しかし、敷地内の駐車場には特例措置があり、延床面積の5分の1を上限として、延床面積から駐車場の面積を除くことができます。
たとえば延床面積180平方メートル、インナーガレージ33平方メートルのとき、延床面積は147平方メートルとして算定されます。算定上の延床面積が減ることで、建築できる面積が広がります。インナーガレージは、居室としての機能もありながら、一般的な駐車場と同様に、延床面積を増やせるというメリットがあります。
注文住宅にインナーガレージを設けるデメリット
ここまでインナーガレージのメリットを紹介しましたが、もちろんよいことだけというわけではなく、デメリットもいくつか存在します。ここからは、インナーガレージを設ける前に知っておきたいデメリットを3つ紹介します。
音・排気ガス・湿気への対策
インナーガレージに隣接した部屋への、シャッター音やエンジン音、排気ガスやガソリンの匂いが漏れやすいという問題、また湿気がこもりやすいという問題もあります。といっても、改善できる方法がないわけではありません。たとえば音の問題については、ペアガラスの使用やシャッターの種類を工夫することで対策できます。また、匂いや湿気の問題については、ダクト換気扇を埋め込むことで対策が可能です。
耐震性をあげる補修工事必要な場合もある
インナーガレージを設けると、構造上どうしても建物を支える部分が少なくなります。そのため、耐久性や耐震性をあげるための補強工事が必要です。また、大きさや間口の広さによっては構法が限られてしまう場合もあります。思いのほか工事費が高額になることもあるので、事前に見積をしっかり取っておくと安心です。
シャッターやドアのメンテナンスが必要
インナーガレージの出入口にシャッターなどを設置している場合、故障しなくても劣化は避けられず、定期的なメンテナンスへの費用がかかります。劣化が進むと、シャッターを上げるのが重くなる、異音がするなどの症状が出ます。シャッターの寿命の目安は手動10年、電動15年ほどですが、海辺の地域は塩分で金属が錆びやすくなり、目安より早く傷んでしまうこともあります。
インナーガレージをつくる際の注意点
次に、インナーガレージをつくる際の注意点を3つ紹介します。快適な生活を後押ししてくれるインナーガレージですが、間取りを工夫する必要があること、構造上の制約があること、緩和制度がまぎらわしいことについて、順に解説します。
間取りを事前に確認しておく
インナーガレージに必要な面積を決めるために、今の車のサイズと、将来買い替え予定の車のサイズが極端に違わないか、車の台数が増える可能性がないかも考えておきましょう。また、各部屋の間取りにも注意が必要です。夜間は、思いのほか扉を巻き上げるモーター音が気になります。ガレージの扉もシャッター式、スライダー式、引き戸式などさまざまです。
インナーガレージの真上に寝室がある場合は、静粛性の高さを優先してシャッターを選ぶのもよいでしょう。また、インナーガレージは1階に設置することになるので、必然的に居住空間は2階、もしくは3階に集中します。そのため、老後の階段上り下りの負担が少なく済むような工夫も大切です。
リフォームで増設できない場合もある
インナーガレージの費用は、一坪あたり約50万円からが一般的です。普通自動車1台に必要なスペースが約4~5坪のため、1台用の費用は約200万円からとなります。新築時に、予算の都合でインナーガレージを作るのを保留にして、後で増設しようとしたとき、構造上できないケースもあります。また、新築でインナーガレージを付けるより、リフォームで増設する費用が高くなることもあるので、事前に双方のパターンの金額を調べておくのもおすすめです。
固定資産税の緩和特例はない
インナーガレージを設けても、固定資産税の上ではインナーガレージ分の床面積を差し引いて査定する特例はありません。なぜなら、固定資産税は登記されている延床面積で査定されるからです。インナーガレージに関する延床面積を増やせる緩和特例はありますが、固定資産税の緩和特例はありません。まぎらわしいですが、混同しないよう注意しましょう。
まとめ
この記事では、注文住宅にインナーガレージを設けるメリット・デメリットとつくる際の注意点を紹介しました。インナーガレージは、車庫として機能しながら居住空間としての性質も持ち、特有のメリットがたくさんあります。しかし、デメリットも存在しており、設置してから後悔しないためにも、注意点も気に留めながら計画を進めていきましょう。